歯科クリニックの売却を考える際に、クリニックの価値をどのように評価するかが非常に重要です。特に、自分のクリニックの価値がわからない方にとって、M&Aにおける価格の算出方法を知ることは安心感につながります。
本記事では、M&Aにおいて一般的に使われる価格算出方法を分かりやすくご紹介します。専門的な知識がなくても理解しやすい内容にしていますので、ぜひ参考にしてください。
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クリニックの3つの価格算出方法とは?
クリニックの売却価格を決めるには、複数の方法が存在します。大まかに分けると「収益性」「資産」「比較」に基づく3つの評価方法があり、それぞれ特徴と目的に応じた適用があります。
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収益性に基づく評価法
収益性に基づく評価法では、クリニックの収益力を基に価値を算出します。将来的な収益が安定して見込まれる場合に有効な評価方法です。
EBITDA倍率法
EBITDA倍率法は、クリニックの収益力を評価するためのシンプルかつ一般的な方法です。EBITDA(利息、税金、減価償却前の利益)に、業界の標準倍率を掛けることでクリニックの価値に換算します。
例えば、年間のEBITDAが1,000万円で、倍率が5倍と設定されている場合、クリニックの評価額は5,000万円となります。この方法は収益性を反映した評価方法であり、M&A市場で広く利用されています。
DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)
DCF法は、将来のキャッシュフローを現在価値に割り引くことで価値を算出する方法です。具体的には、クリニックが将来生み出すと見込まれるキャッシュフローを割引率を用いて現在価値に換算します。
この方法は、収益性だけでなくクリニックの成長ポテンシャルも考慮しますが、予測が不正確な場合、評価額に誤差が生じる可能性があります。そのため、専門知識を持つ専門家のサポートが必要です。
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資産に基づく評価法
資産に基づく評価法では、クリニックの保有する資産や負債に基づいて価値を算出します。保有する資産が多い場合に有効な評価方法です。
簿価純資産法
簿価純資産法は、財務諸表に記載された純資産額を基に評価する方法です。クリニックの総資産から負債を差し引くことで算出されますが、将来の収益性や市場価値を反映しない点に注意が必要です。
時価純資産法
時価純資産法は、クリニックの資産を現在の市場価格で再評価して価値を算出します。資産が高い市場価値を持つ場合には高く評価される傾向がありますが、再評価にはコストと時間がかかるため、慎重に行う必要があります。
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比較に基づく評価法
比較に基づく評価法は、他の類似クリニックの取引価格を参考にして評価する方法です。市場に出回っている実際のデータを参考にするため、現実的な評価がしやすい特徴があります。
類似企業比較法
類似企業比較法は、地域や規模、診療内容が似ているクリニックの取引価格をもとに価値を評価します。クリニックが属する市場の状況を反映しやすい評価法ですが、適切な比較対象が少ない場合には、適用が難しいことがあります。
マルチプル比較法
マルチプル比較法は、売上高や利益に一定の倍率を掛け合わせて価値を算出する方法です。倍率が適切でない場合には実態と離れるリスクもあるため、慎重に使用することが大切です。
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その他考慮される点
クリニックの売却において、上記の評価方法だけでなく、スタッフや患者、設備の状況も価値に影響を与える要因です。以下のような点もチェックしておくと良いでしょう。
スタッフと患者の維持
安定したスタッフや長期の患者が多いクリニックは収益の安定性が高いため、価値が向上します。逆に、スタッフの離職率が高い場合や患者数が減少傾向にある場合は、評価が低くなる可能性があるため注意が必要です。
設備の状態と技術の導入
最新の設備を備え、技術を導入しているクリニックは将来の成長が期待できるため、評価が高くなります。最新の医療機器やデジタル技術を導入することで、競争力が高まり、売却時の評価にも良い影響を与えます。
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まとめ
クリニックのM&Aにおける価値の算出方法には様々なアプローチがあります。収益性、資産、比較法に加え、スタッフや設備の状況なども考慮し、包括的に評価することが重要です。また、売却を検討する際はM&Aの専門家に相談し、適切な価格での取引を目指すことが安心です。