
歯科クリニックの売却を検討する際、「自分のクリニックはいくらで売れるのか?」 という点は最も気になる部分です。
適正な価格を知らないままでは、安く売却してしまったり、逆に高く見積もりすぎて買い手がつかないリスクもあります。
本記事では、歯科クリニックのM&Aで使われる代表的な価格算出方法3つ を、実際の算出事例を交えて分かりやすく解説します。
クリニックの3つの価格算出方法とは?
歯科クリニックの売却価格を決める際には、大きく分けて以下の3つの評価方法が使われます。
・収益性に基づく評価法(クリニックの利益や将来の収益力を基準にする)
・資産に基づく評価法(設備や不動産、資産価値を基準にする)
・比較に基づく評価法(他クリニックのM&A事例を基準にする)
それぞれに特徴があり、ケースに応じて組み合わせて使われることもあります。
収益性に基づく評価法
EBITDA倍率法
もっともシンプルで一般的な方法が EBITDA倍率法 です。
「EBITDA(利息・税金・減価償却前利益)」に、業界標準の倍率を掛けることで算出します。
算出例
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年間EBITDA:1,000万円
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業界倍率:5倍
→ 評価額:5,000万円
この方法は「今の収益力がどれだけ安定しているか」を基準にしており、開業から数年以上経ち、安定した患者数があるクリニックに向いています。
DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)
将来生み出すキャッシュフローを現在価値に割り引いて算出するのが DCF法 です。
算出例(簡略)
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今後5年間の年間キャッシュフロー予測:毎年1,200万円
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割引率:10%
→ 各年のキャッシュフローを割り引き、合計すると 約4,550万円
成長が見込まれる新規クリニックや、今後の拡大戦略を持つ医院の価値を反映しやすい方法ですが、将来予測の設定次第で評価額が変動するため、専門家のサポートが必須です。
資産に基づく評価法
簿価純資産法
財務諸表に記載された資産から負債を差し引いて算出します。
算出例
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総資産:8,000万円
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負債:3,000万円
→ 評価額:5,000万円
シンプルですが、将来の収益性や患者基盤を反映できない点に注意が必要です。
時価純資産法
資産を「現在の市場価値」で再評価する方法です。
算出例
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医療機器(購入時1,500万円 → 現在の市場価値800万円)
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不動産(簿価3,000万円 → 市場価値4,500万円)
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負債:2,000万円
→ (800万円+4,500万円)-2,000万円=3,300万円
不動産を所有している場合など、資産価値が高いクリニックで有効です。
比較に基づく評価法
類似企業比較法
地域や規模が似ているクリニックの売却事例を参考にする方法です。
算出例
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近隣エリアの同規模クリニックの売却額:4,500万円
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自院も同水準の売上・規模 → 評価額:約4,500万円
市場動向を反映できますが、比較対象が少ない場合は活用が難しいこともあります。
マルチプル比較法
売上や利益に一定の倍率を掛けて算出します。
算出例
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年間売上:1億円
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業界売上倍率:0.6倍
→ 評価額:6,000万円
実態と離れる可能性があるため、倍率の設定が重要です。
その他考慮されるポイント
スタッフと患者の維持
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事例A:長年勤務しているスタッフが多く、患者リピート率が80% → 高評価
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事例B:スタッフの離職率が高く、患者数が年々減少 → 評価額マイナス調整
設備の状態と技術導入
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事例A:最新のCTスキャン・デジタル予約システムを導入 → 成長性が高くプラス評価
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事例B:老朽化したユニットが多く更新が必要 → マイナス評価
まとめ
歯科クリニックのM&Aにおける価格算出方法には、
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収益性評価(EBITDA・DCF)
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資産評価(簿価・時価)
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比較評価(類似事例・マルチプル)
といったアプローチがあります。
加えて、スタッフ・患者基盤・設備状況 といった「目に見えない価値」も重要です。
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